(放送日:2019年8月25日/投稿恐怖体験談SP)
沖縄県Iさんからの投稿です。
これは、10年ほど前に体験した話です。
私は、行きつけのスナックで働くMちゃんが入院したと聞き、仕事の合間にお見舞いに行くことにしました。
Mちゃんが入院したのは地元の大きな総合病院でした。
その病院には、嫌な噂がありました。
4階には末期癌の患者が入院する病棟があり、そこに入院するともう帰ることはできない。というものです。末期の癌患者、ということでしたら、回復することなく亡くなるという事も少なくないのでしょう。しかし、そうであっても聞いていて気持ちの良い話ではありません。
そして、Mちゃんが入院していたのもその4階だったのです。Mちゃんは肺癌でした。しかし、入院する直前まで元気に働いていたし、とても末期とは思えなかったので、噂のことは気にせずに病室へ行きました。Mちゃんは思っていたよりも元気そうで安堵しました。しばらく世間話をし、早く良くなってまた店に出て欲しい、Mちゃんがいないと寂しいからね、と元気付け病室を後にしました。
エレベーターが来るのをひとり待っていると、病室からMちゃんが小走りで出てきます。そして私の方へ駆け寄ると「私、もう帰れないんだよね」と深刻な顔で聞いてきました。彼女も例の噂を聞いたのでしょう。私は努めて明るく「そんな話冗談さ、噂だよ、本気にしたらダメよ」と告げ彼女と別れました。
それが、彼女との別れになりました。
私が見舞った数日後、Mちゃんは息を引き取ったそうです。若いので進行が早かったのかもしれません。私は静かに冥福を祈ることしかできませんでした。
それから数日後、久しぶりに彼女が勤めていたスナックへと向かいました。
店の前に人影があります。
徐々に距離が近くなり、その人が誰かわかりました。Mちゃんです。Mちゃんは私に向かって優しく微笑みかけました。確かに亡くなったはずの彼女が目の前に現れ驚きましたが、恐怖などは感じませんでした。Mちゃんは何もいう事もなく、やがて消えて行きました。その場に立ち尽くしていた私は、彼女の姿が消えたところで、ゆっくりと店へと進み扉を開けました。カウンターにはママさんが一人で座っています。私が今店の前でMちゃんを見た、と告げると、ママさんは驚く様子もなく、
「Mちゃん、今までここに座ってIさんが来るのを待ってたのよ」
と、自分の隣を指さし示します。
その日は、丁度初七日でした。
彼女が最期のお別れを言いに来てくれたのでしょうか。それ以来、彼女の姿を見ることはありませんでした。
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